令和元年8月23日・初版


ティアラヒロインSP「三人の性隷天使・第7部:完結編」第3章「勃発!鬼ヶ島沖海戦」



 オークション後の三人娘の状況。

 紅天使フォルティアはセックスマシーン・ルティアとなり、沖縄の離島で人間達の玩具となった。

 流星天使ラスキアは鬼ヶ島に残り、特級の淫女に磨き上げられるべく、悪党達に輪姦され続けている。

 そして、まだお伝えしていないのが、聖天使ミレイヤ……牝獣となり某国外交機関に落札された、その後だ。

 読んで御察しの通り、前話で風下が接触したハニートラッパー・レイヤこそが、ミレイヤの現在の姿である。

 レイヤは数か月前から存在し、ミレイヤこと鈴谷聖美の失踪は二日前。

 「時間が合わない」と風下が誤解したのも無理はない。

 鬼ヶ島と人間界では時間の流れが異なっているのだ。

 時空の狭間にある鬼ヶ島の方が、はるかに時間が速く流れている。

 聖美、流奈や紅子が失踪した48時間は、鬼ヶ島ではおよそ100日に相当するのだ。

 とはいえ、どちらに居ても、本人の時間の感じ方が変わるものではない。

 実際、また彼女達の認識の上でも、三人娘は丸々一月に渡り、徹底的に凌辱調教され続けたというわけだ。

 時空の狭間を説明するとき難しいのは、時間の流れが速い方(この場合、鬼ヶ島)から遅い方(この場合、人間界)へ出ていく場合だ。

 元々、鬼ヶ島に住む悪人達は問題ない。三人娘だけが鬼ヶ島に入って出るだけでも、問題は無い。

 人間界の他の者達と時間を共有していない、若しくは極少数人に限られるから、その場の時間の流れに従っても辻褄が合うのだ。

 辻褄が合わなくなるのは、他と時間を共有している人間界の者が、鬼ヶ島に入って出る場合である。

 三人娘が潜入するも敗北し、散々犯された上で、売り飛ばされていく過程の上で、鬼ヶ島に性奴隷バイヤーたる人間達を招き入れてしまった。

 バイヤー達はミレイヤとフォルティアを人間界に持ち帰り、更にひと月に渡って犯し弄んだのだ。

 つまり、ミレイヤとフォルティアが性奴隷として人間達に犯され始めたのは、風下や萩原教授にとって、失踪二日目の事であっても、バイヤー達にとってはひと月以上遡った過去の話となる。

 同じ人間界で生きる者が、時間共有において全く無関係ではいられない。

 今現在、友達の友達だったり、知り合いの知り合いだったりするかも知れないし、何らかの形で過去や未来に関わる事があり得るからだ。

 だが当然の事ながら、同じ時間に同じ人間が二人存在することは出来ない。

 だから、時空は別の存在を作り出し、過去に出現させる。

 フォルティアはルティア、ミレイヤはレイヤという性奴隷として、人間界にひと月前、デビューしたのだ。

 そして前章で、ミレイヤは風下と接触することにより、時の流れが一致し、存在が同一化したのだが……。

 まあ、この時空説明の件は物語の進行とは直接関係ないので、深く考える必要はないだろう。

 要は筆者が伝えたいのは、ミレイヤが悪人達に一か月間犯され、レイヤとなって人間達に更に一か月間弄ばれた経緯だ。

 この時期、外交は八方塞がりで、政府も外務省も手詰まりの状態だった。

 近隣諸国とは領有権の問題。欧米とは経済問題で揉めに揉めている。

 発展途上国とは親密な関係を築き上げてきたものの、倍加する援助や支援を表明する大国の横槍が入り、暗雲が立ち込めている。

 レイヤの用途は、厳密にいうとハニートラップではなく、単なる要人接待だ。

 ハニートラップを仕掛けるほどの戦略家が政府にも外務省にも皆無だったからだ。

 ただ、レンタル直後にとある発展途上国首脳に手当てしてみたところ、その効果に誰もが驚愕した。

 レイヤの肉体に溺れたアジアの要人は、一夜で超親日家に豹変し、大きな譲歩を逆に提案して来た<のだ。

 以来、罠ではなく接待の範疇ではあるものの、レイヤの運用は、交渉を進展させるための大きなツールとなった。

 (元がティアラヒロインなので当然なのだが)レイヤのポテンシャルの高さは肉体だけではない。

 相手の趣味趣向に合わせる順応性はもちろん、必要に応じてスラングまで話せる語学力も備えている。

 無論、コスチュームやキャラは外国人ウケを狙って、その都度変わる。

 アフリカ発展途上国の首相接待のケースでは、黒のアキバ系地下アイドルスタイル。

 独り客席に座る首相の目の前で、ミニスカをヒラヒラ舞わせて、踊って歌う。

 ミニコンサートが済んだところで、衣装を着たまま、汗で濡れた黒いパンティーだけを膝まで下げ、首相の腰の上に座り込む。

 黒い肉棒から白い液体をたっぷり吸いだした翌日には、開発援助(無論、見返りの資源確保が狙い)が快諾された。

 近隣の某国軍高官の場合はバニーガール。

 滞在ホテルのVIPルームでお酌から入り、ビスチェを剥がさせ、生乳の谷間で顔を挟み込む。

 ひとしきり肌温を楽しませたら、丸い尻尾のついたお尻をフリフリ。

 バニースーツはノーパンだから、ずらされれば遮るものは無い。

 長い耳が何度も折れてしまう程、激しく突かれ、何度も受精させられた。

 その日を境に、領空領海侵犯がパタリと止んだのは偶然だったのか?

 外資連合の事務総長は親日派。

 大和撫子好みだから、当然、浴衣だ。

 但し、趣向は正反対。浴衣を脱げば、黒レザーのボンテージスーツ。

 髭面の顔面に、張りのあるお尻で圧し掛かったり、巨乳で挟んだりして、窒息寸前にまで追いつめる。

 徹底的に痛めつけながら、何度も白い肉棒を挿入させて、白濁液を絞り取る。

 そして、やはりその日を境に、為替の乱高下が落ち着きを見せていく

 我が国の総理大臣が超大国の大統領に相伴する際は、元気の象徴…チアガール。

 純白のパンティーを曝け出しながら、両国にエールを送る。

 この時だけは特別に中々機会の無い3Pが行われた。

 レイヤを間に共に一つに繋がるのだから、親密度の深まりは握手やハグの比ではない。

 穴兄弟の契りを交わしたことは一部の者しか知らないが、和やかな雰囲気とともに、首脳会談は無事終了した。

 代表的な例としてはこんなところだ。

 以上のように、性奴隷レイヤ……聖天使ミレイヤのレンタルされた環境は最も恵まれていた。

 権力者ばかりだから、殆ど老人だし、人種は多彩だが、所詮はひ弱な人間だ。

 肉体的なダメージは鬼族やバンテッド一味に日々輪姦されているラスキアに比べるべくもない。

 しかも、外交交渉をスムーズにしているという大義があるのだ。フォルティアほど屈辱的な奉仕にはなり得ない。

 犯されるのは同じでも、馬鹿げた妊活ゲームとはレベルが違うのだ。

 とはいえ、これは第一回目のレンタル。

 レンタル期間が終われば、また鬼ヶ島に返却され、再度仕込まれた上で、第二回目のオークションが待っている。

 次は誰がラッキーなレンタル先に当たり、誰が貧乏くじを引くのか?

 変わらないのは、身体の隅から隅まで弄ばれ、犯されることだけだ。

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 夜の帳がおり始めようとしているトワイライトゾーン。

 全ての景色が最も美しく、妖しい時間帯にヘリは護衛艦の上空に到達した。

 広い飛行甲板にアイランド型の艦橋。

 仕様も外観も艦艇の種別で言うと空母である。

 対空兵器である機関砲とミサイル発射管が備えられている程度で、武装は目立たない。

 空母という特性を活かした哨戒や支援、災害対策が主な用途に考えられた、いわば防災空母であり、会敵しての直接戦闘は一切考えられてはいないようだ。

 夕闇が迫る中、加えて巡航速度で突き進む艦であっても、天候や風量が良好なれば着艦には問題はないようだ。

 艦と速度を合わせたヘリは煌々と照らされた飛行甲板のど真ん中にフワリと降り立った。

 何人かの自衛官が出迎えた。

 そのセンターに居るのは、細身で長身の将官だ。

「旗艦ヒュウガにようこそ! 私がこの艦を任されております輝原です。現在、任務中ですので、簡単なご挨拶にて、失礼させて頂きます。海の上ですので、何かとご不便があるかも知れませんが、このようなこともあろうかと、女性士官も乗艦しておりますので…」

 艦長は、海の男というより、技術者や科学者といった雰囲気。

 クールという文字を絵にかいたような将官だ。

「いえいえ、どうぞお構いなく! 私達も調査でお邪魔させて頂いたものですから……」

 風下を通り越し理愛が応じたその時だった。

 突如、艦全体にサイレンが鳴り響き、様々な箇所の赤ランプが回転点灯し始めた。

“緊急連絡! 総員第一種戦闘配置につけ! 繰り返す! 総員、第一種戦闘配置につけ!”

「んっ、第一種戦闘配置……!? 一体何が? 申し訳ありません! 私達は艦橋へ参りますので……船務長、ご案内を!」

 文字にするとびっくりマークが付くが、口調は沈着冷静そのもの。

 さすがは訓練を積んだ艦長だ。

 突飛な事態にどのように対応すれば良いのかわきまえている。

 傍らの女性士官に命ずると、艦長以下の将官は一斉に艦橋へ足早に向かっていった。

 広い飛行甲板だったが、中央に降り立ったこともあり、艦橋はすぐ近くだ。

 次々に照明が落ちていく中、月明かりを頼りに、傍らの扉から控室へ通された。

 「第一種戦闘配置ということは、会敵したということで…もちろん、こんなことは初めてです!由々しき事態になっているようです。私も艦橋へ参りますので、この部屋でお待ちください」

 第一種戦闘配置とはいつ攻撃を受けてもおかしくない状態なのだろう。

 心持ち不安げな声を残し、女性士官は甲板とは反対の扉から艦内廊下へ出ていった。

 緊急事態に直面しているからか、艦内照明は室内も廊下も抑え気味の照度になっている。

 通されたのは、4つの長テーブルと24個の椅子しかない、無機質で武骨な造りの部屋だ。

 壁には地図や海図、また各種の賞状や感謝状が掲示されている。

 甲板と直結していることからして、おそらく飛行搭乗員の控室に違いない。

「どうやらこれは強力な電磁波による、悪意を持った干渉……封じ込め攻撃ですよ!」

 いつの間にか開いたノートパソコンを見ながら理愛がつぶやいた。

 覗いてみると、モニターには現在の状況を示す艦内見取り図が映し出されていて、至る所で記号が赤点滅している。

 一体どうやって……と目を移すと、これまたいつの間にか、電源コードとは違うケーブルがコンセントに繋がれている。

 そこから、艦のホストコンピューターに侵入しているのだ。

 風下の中で思わず疑問が言葉になった。

「えっ、何で? 電気コンセントとシステムは別系統なんじゃないの?」

「風下先生! 今はそんなことより、この状況を打開することの方が先決だと思います!ご覧になってください。レーダーもミサイルも生きているのに、ラインが途中でせき止められていて、艦の制御が不能になっているようです!」

 冷静な声で理愛が指し示すモニターの状況は言葉の通りだ。

 青マークで記された探査戦闘機能からのラインというラインが、悉く途中で断線されていて、艦橋にもCIC(作戦司令所)にも届いていない。

 目は見えても、その映像が脳まで届かない。腕は動くが、脳から指示が伝わらない。この艦は、そんな状態に置かれているのだ。

「そして、招かざるお客様が近づいている様ですよ!」

 レーダーがクリックされ、艦の周囲の海図がモニターに広がる。

 前方から3つの点滅が接近しつつあるのが見て取れた。

 理愛は3つの点滅にカーソルを合わせると、すばやくキーボードを操っていく。

「速度からするとレシプロ……プロペラ機のようですね! 機種識別をかけると……TFBアベンジャー、先生、ご存知ですか?」

 フライトシュミレーション系のゲームに一時期ハマった風下にとっては、馴染みのある機種だ。

 WW2の米海軍の攻撃機。

 当時としては高速で、航続距離も長く、頑丈な機体を持つ。大型爆弾も積めるが、通常は雷撃…つまり魚雷攻撃を得意としている傑作機だ。

 「大和」を初めとする旧日本海軍艦を多数撃沈している記録がある。

「もちろん、知っているけど…三機も、なんでこの現代に? まるでタイムスリップじゃないか!?」

「タイムスリップではありません! 攻撃機の軌跡を辿ると、明らかに目標の島から飛び立っています! それに、ご覧になってください!電磁波は、その島から照射されていますし…すでに、攻撃機のレーダーでロックオンまでされています!」

 理愛が操るPCに次々と情報が映し出されていく。

 電磁波による障害やロックオンの警告、攻撃機の予想コース、そして接触するまでの残り時間。

 ゲームの中でしか体験したことのない緊迫した状況だ。

 そういえば、PCモニターは正に海戦シミュレーションのゲーム画面と化している。

「う〜ん、これ以上の接続はこの部屋からでは出来ないようですね! CIC(戦闘指揮所)で切り替えないと……私、艦長さんにお願いして来ます!先生、このPCをお願いします!」

 言うが早いか、理愛は扉を開けて部屋を後にした。

 モニターを見れば、会敵まで、もう残り1分を切っている。

 丸腰状態の今、どれだけ昔の兵器であろうが、とんでもない脅威に違いない。

 そう考えると、生まれてここまで経験したことのない『戦闘に巻き込まれるという恐怖』が湧き上がってきた。

「マジかよ…!?」

 思わず体が震える風下だったが、モニターに目が行った瞬間、ハッと気づいた。

 リアルの戦闘や戦争は初めてでも、バーチャルならば玄人、というより達人だ。

 戦闘機同士の空戦から戦車戦や海戦までこなす、パイロットとしても、指揮官としても、一流の腕前と十二分な経験を持っている。

 練習機で倍速の最新鋭機をバタバタ撃墜してきたし、一隻の戦艦だけである惑星の全艦隊を葬り去ったこともある。

 実戦の場に居ても、モニターを見て、PCを操るだけなら、ゲームと変わらない。

 攻めて来るのは半世紀以上前の軍用機。そして乗っているのは最新鋭の護衛艦だ。

 電磁波の障害さえ解くことが出来れば、武装の貧弱な空母型護衛艦であっても、十分に対抗出来るはずなのだ。

 そんな風下の想いに呼応するように、モニターに二つの表示が浮かび上がった。

 操舵キーと武装キー。

 そして、制御可能の文字。

 理愛の仕業なのかどうかは全く不明だが、この瞬間から、この艦は完全に風下のものとなったのだ。

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「二号機、アンヴァン! いつでも射点に入れます! 右側から行きますか? それとも左から?」

「三号機、タイラント! ぐふふっ、今すぐ雷撃可能ですぜ!」

 嬉々とした声で、列機から返事が入る。ステラは操縦席に上空での旋回を命じながら、海面の護衛艦の様子を確認した。

 護衛艦はチカチカと緊急用のライトを点灯させながら、静かに進んでいる。

 会敵しているのに発光していたり、攻撃を受けようとしているのに通常船速だったり、無論、対空砲火の気配もない。

 電磁波により全てが制御不能になっている様子が見て取れる。

 アベンジャーは三座(乗員三名縦列)の攻撃機だ。

 攻撃隊の指揮官でもあるステラは、中央の席に陣取り、操縦は配下の黒服に任せている。

 序盤でティアラヒロイン迎撃に出たゼロ戦同様、機体はWW2当時のものだが、内装やソフトは現代仕様に改良済だ。

 それゆえ、航路や魚雷投下射点の計算は全て電子頭脳が瞬時に行う。

 ステラは考え、決定すれば良いだけだ。

「ひっひっひ! 折角、魚雷が三本もあるのだ! 時間差で嬲るように仕留めてくれよう! まずはアンヴァン、左から行け!ただ、真ん中には当てるなよ! 狙いは後部だ!」

「アイアイサー! お任せあれ!」

 二番目に位置していたアンヴァン機が滑るように前に出て、時計回りに降下を開始した。

 防御の薄い護衛艦の中央に魚雷を当てれば、真っ二つに折れて轟沈させてしまう。まずは機関と舵を破壊し、更に動けなくしてしまおうというわけだ。

 すっかり陽は暮れてしまったものの、今宵は月が明るい。

 大きな弧を描きながら、アンヴァン機が滑るように黒い海面に舞い降りていく。

 やがてヒラリッと翼を翻すと、速力を上げていく。

 進行方向には護衛艦。魚雷の射点に入ったのだ。

「くっくっく、まずは動けなくなって貰いますよ! 3……2……1……投下!」

 あざ笑うかのようなアンヴァンの言葉と共に、真っ黒な海面に一筋の航跡が現れ、真っ直ぐ護衛艦に向かっていく。

 静寂に包まれた暗い色の世界に、大音響を響かせ、オレンジの火球が浮かび上がるのも時間の問題だ。

 ただ、見惚れてばかりもいられない。

 急所を外して狙ってはいても、護衛艦にそれほどの耐性があるとは思えない。

 順次、魚雷を打ち込まないと、使い切る前に沈んでしまうかも知れないのだ。

「タイラント! 次は前を狙え! 真正面からぶち込んでやるのだ!」

「ぐふふっ! ラジャー!」

「そして我が機で止めを刺す! 右舷に回り込むぞ!」

 全ての指示を出し終えたステラは再度、海面を見下ろした。

 あと数秒でアンヴァンの魚雷が命中するはず……だったが、いつの間にか微妙に雷跡と標的の位置関係がずれている。

 急に護衛艦が速力を上げ、舵を切ったのだ。

「んっ!? これは一体!?」

 ポイントを狙ったとはいえ、余裕すら感じさせたアンヴァンの照準はピッタリだったはずだ。

 何らかの理由で電磁波による封印が解けていたとしても、これほどまでに見事にかわされるとは、想像すら出来なかった。

 ただ所詮相手は人間だ。アンヴァンが外したというべきだろう。

 仮に、かわされた結果であったとしても、これは単なる偶然であり、ビギナーズラックにすぎない。

「ぐふふっ! アンヴァン子爵、狙い過ぎたようですな! 代わりにこのタイラントが……念の為、ホーミング(自動追尾)機能を使って、大きな穴を空けてやりますぜ!」

 護衛艦はかなり速力を増したようだが、宇宙基準ではスローモーションに近い。

 下卑た笑いとともに、三番機のタイラントがグンと前に出て、降下を開始した。

 攻撃機自体はWW2時点の機材だが、搭載魚雷は現代式で、当然、目標自動追尾機能も付いている。

 必中の自信があるからでもあり、嬲るためでもあったので、一番機のアンヴァンはホーミング機能をOFFの状態で雷撃したのだ。

「ぐふふっ、射点に入りましたぞ! 3…2…1…投下!」

 月明かりの元、タイラントの雷跡が、護衛艦の未来位置めがけて伸びていく。

 目標の速力や転舵に合わせているから、真っ直ぐではなく、クネクネ曲がる……が、それだけに精度は高く、回避行動など取れるはずもない。

 と、思われたのだが……

 護衛艦はガクンと急減速すると、雷跡から逃げるように転舵した。

 同時に、ポーンと数個の物体を打ち出した。

 月明りを受けながら打ち出された物体はタイラントの雷跡を遮るように落下すると、バラバラの方向へ筋を残し走り始めた。

 デコイ……対魚雷防御システムだ。

 デコイは、艦に似せた擬音を発し、ホーミング魚雷を引き付けてしまう囮だ。

 文字通り、間一髪で雷跡は護衛艦の鼻先をかすめると、大きく左方向へ逸れて行った。

 無論、予期していたオレンジ色の炎は上がらない。

 日本の自衛隊には実戦経験が皆無なことなど誰もが知っている事実だ。

 訓練ならともかく、実際に魚雷の回避行動を体験した隊員などはいないはずなのだ。にもかかわらず、神技とも思えるような絶妙の操艦と、高度な知識に裏付けられた防御システムで魚雷を回避して見せたのだ。

 赤子の手を捻るつもりだっただけに、信じがたい状況だった。

「うぬう〜、小癪な人間どもめっ! まぐれが何度も続くと思うなよ!」

 デコイを初めとする魚雷防御システムは、すべて自動追尾対策から考えられている。

 要は、一発目のようにホーミング機能を使わなければ、一切効果がないのだ。

 操艦が間に合わないほど、可能な限り近づいて雷撃すれば、デコイも効かない。

 各機搭載魚雷は一本だけなので、もう遊びはないが、命中すれば撃沈には十分だ。

「ひっひっひ、今度こそ、暗い海面を明々と照らしてくれようぞ! 全速で突っ込むのだ! ようし、行くぞ! 3……2……1……投下!」

 一気に機体が引き起こされ、上昇に転ずる。

 振り向いて暗い海面を見下ろせば、雷跡水飛沫を上げて雷跡が伸びていく。

 三本目の正直。これなら確実に命中すると予期した瞬間だった。

 突如、護衛艦の艦橋が発光し、無数の火花を吐き出したのだ。

 火花は一筋の束となり、雷跡に浴びせられた。

“ピカッ…ズズッーンッ!”

 護衛艦まで僅か100m。雷跡の先頭で閃光が煌めき、遅れて鈍い爆発音が響いた。

 魚雷が機銃掃射で打ち抜かれたのだ。

 魚雷は海中だからレーダーが効かない。すなわち射撃は自動管制ではなく目視手動となる。

 100km/h超の高速で進む標的に弾を当てるとなると、かなりの腕を持つスナイパーでないと不可能だ。

「うぬう〜、なっ、なんと…」

 神技の操舵手、落ち着いた防御指揮、そして熟練の射撃術を持つ砲手。

 平和ボケ国家の護衛艦に、これほどまでの名手が乗り合わせているとは、思いもよらなかった。

 余ることはあっても、足りなくなるはずなど無い三本の魚雷は、全て使い果たしてしまったのだ。

 残された武器は小型爆弾と旋回機銃のみ。

 しばし呆然としたステラだったが、気を取り直すのも早かった。

 所詮は愚かな人間相手なのだ。

 残された武器で沈めることは出来なくとも、炎上させてしまうくらいは容易い。

「アンヴァン! タイラント! 旋回して同時攻撃だ! 全小型爆弾を叩き付けるのだ!」

 アベンジャーの翼下に2発。三機で6発の小型爆弾を積んで来ている。

 魚雷同様、誘導装置付なので、ロックオンすれば外れることはない。

 再度、モニターの中央で護衛艦を捕えたステラは、自動照準装置のスイッチに手を伸ばした。

 その瞬間、護衛艦の艦橋がチカッ!チカッ!チカッ!と三回煌めき、白煙が上がった。

 対空迎撃ミサイルが放たれたのだ。

「まさか…電磁波封じが破られているのか!? ぐぬう…アンヴァン! タイラント! 散開だ! ミサイルから逃げろ! 逃げるのだ!」

 グイッとGがかかり、乗機が反転上昇する。

 ミサイルに気付いた操縦員の黒服がとっさに舵を切ったのだ。

 前にも書いた通り、機の装備は最新でも、性能自体は半世紀以上前のものだ。

 攻めている分には問題ないが、攻守交代となると極端に分が悪い。

 逃げようにも速力は遅いし、ミサイルへの耐久性などもちろん皆無だ。

「魚雷攻撃の失敗といい、この反撃といい、人間業とは思えませぬ! くっ……追尾ミサイルのようだ! まっ、まずいっ!?」

 ニヒルでクールなはずのアンヴァンの声が届いた。

 冷静な分析を伝えようとしているが、汗がにじみ出るような緊迫感を隠せない。

 すんでのところでかわしたミサイルが、方向転換をして、またアンヴァン機に迫っていく。

 三人娘の尻を責めまくった報いとばかりに、バックから狙われているのだ。

「ぬおおっ! だっ、ダメだ! ステラ様、ミサイルが早過ぎるっ! 逃げ切れないっ!」

 完全に我を失っているタイラントの悲痛な叫びも届く。

 この期に及んでしまうと、悪の天才戦略家ステラにもどうすることも出来ない。

 使い手や乗り手がどうであっても戦闘の帰趨は兵器の質で決まる。

 その兵器に数十年の技術の開きがあれば、結果など事前に決まってしまう。

 勝利に驕り高ぶり、戦利品を意のままに快楽を貪り、挙句の果て、弱敵を舐め切った当然と言えば当然の報いなのだ。

「ぬうっ……このままではっ! しっ、仕方がない! この場は、一旦脱出し……うぬうっ、なっ、なんと!?」

 備え付けの脱出装置を起動させると、不気味なアラームが響き渡った。

 地球の感覚だと、空戦の脱出装置はパラシュートと相場が決まっている。

 パラシュート脱出ならば、泳がねばならないものの、鬼ヶ島まで戻ることは可能だ。

 だが、大気や宇宙線等の影響を考慮に入れなくてはならない宇宙空間での常識は、パラシュートではなく、空間転送だ。

 そしてこの地球上でもクラッシックな機体の脱出装置には、最新式の空間転送装置が備えられていたのだ。

 しかも、攻撃機の改造者は鬼族だ。当然、転送先も鬼族基準で考えられている。邪悪で欲深い鬼族は、その反面、極端に臆病だ。

 逃げるとなれば宇宙の果てまでも…という考え方なのだ。

「なっ、なんということだ! 転送先が、銀河どころかマゼラン星雲の彼方ではないか!? どっ、どうするのだ!? 戻るまでに丸一年もかかってしまう!」

 最早、笑うことすらステラには出来なかった。

 命が救われるのはいい。だが、地球に帰還するまでの間、ティアラヒロインを犯すことが出来なくなるのだ。

 お気に入りのフォルティアは2か月後にはレンタル明けで戻ってくる。

 戻ればすぐに一糸まとわぬ姿で四つん這いにし、前から、後ろから、そして下に潜り込んで、数々のチューンアップを施していく。

 もちろんレンタル中に貯めた精子を一滴残らず、上下の口から飲ませた上での話だ。

 そうしたステラの人生の中でも屈指の娯楽。

 フォルティアをより高性能のセックスマシーンに磨き上げるという愉みが、一年以上お預けになってしまうのだ。

「ぐぬうっ〜! もう、逃げ切れない! だっ、だが、転送先が……こっ、これでは……あまりに遠過ぎて……!」

 タイラントの悲鳴とも嘆きともとれる断末魔の叫びが響く。

 無論「遠過ぎて…」に続く言葉は「しばらくの間、ミレイヤを犯すことが出来なくなる!」だ。

 抜群のプロポーションと、華麗な美しさを誇るミレイヤだからこそ、悪党随一のキモデブであるタイラントの餌食となるのが絵になる。

 全裸で組み敷かれ、正常位で貫かれ、無理やり舌と舌を絡めるような濃厚なディープキスとともに、中に出される。

 力技による強引な中出しレイプは、パワーを持ち味にしていたミレイヤにすれば、この上なく屈辱的なはず。

 だが、その絶好の構図も一年以上先まで、お蔵入りになろうとしている。

「くっ……次の旋回では、今度こそかわし切れない!しかし、脱出するには、代償があまりにも……あまりにも……大き過ぎるっ!」

 アンヴァンの叫びからは、深い悔いだけが伝わってくる。

 最も愛玩しているペットのラスキアは今も鬼ヶ島で飼われたまま。

 キュートなお尻をフリフリしながら、いつでも種付けされることを待っているのだ。

 勿論、ラスキアの望み通り、長い肉棒で子宮を突き、子種をぶちまけるのは、この上ない快楽ではある。

 だが、アナル好きのアンヴァンとしては、種付けという定義からは外れても、もう一つの穴に中出しするのも、これまた堪らない快楽となっているのだ。

 可憐なルックスと我儘過ぎる肉体。稀有な素材を持つラスキアの成長曲線は素晴らしい。

 どちらの穴を責めるにしても、犯すごとに、絶頂に達する時間が短縮され、注いだ精液が増すほど、昂ぶり度合いが大きくなっていく。

 だが、ラスキアの成長記録もここまでしか記すことが出来なくなろうとしていた。

 アンヴァンにしてみれば、人生痛恨の極みとなるに違いない。

「ぐぬっ、もうダメだ! つっ、次こそは……より濃厚に犯しに犯し、三人娘全員を孕ませてくれよう! ざっ、残念っ……(ピー!)」

「必ず地球に帰って来ますよ! そして、今度は四六時中、三人娘を肌身離さず弄び続けてあげましょう! それにしても……何という結末……(ツゥー!)」

 決意にも宣言にも等しい言葉を残し、アンヴァンとタイラントからの通信が途切れた。

 そして、それとほぼ同時に、両機にミサイルが追いついた。

(グワーンッ!)

(チュドーン!)

 二つのオレンジの閃光と、僅かに遅れて底響きのする爆発音が続けざまに轟いた。

 脱出に成功したのか、火達磨になったのかは判らない。

 ただ、ステラ自身が脱出し、転送されれば、その先で結果を知ることが出来る。

 そして追い込まれたステラには、もう脱出装置にすがるしか、手がなかった。

「ぬうっ! 返す返すも心残りはティアラヒロインの柔肌! 鬼族ごときに独占させることになろうとは! おっ、覚えておれっ!精液を貯めに貯め、戻って来たら一滴残らず三人娘の中に等分にぶちまけてやる!」

 捨て台詞と知りながら、後方から迫るミサイルにステラは叫んだ。

 一味においても優先されるのは、金でも女でもなく、やはり命なのだ。

 下等な人間に撃退された無念さを恥じつつ、ついにステラは脱出装置を起動した。

 宇宙の遥か彼方での、邪悪な仲間達との再会を期し、必ず地球へ帰還することを誓いながら……。

 瞬時に時空の歪みが形成され、シートごと呑み込まれていく。

 目の前が真っ白に眩んでいく中で、走馬灯のように三人娘の裸体が浮かんでは消えていく。

 邪悪に生きる幸せを噛み締めることが出来た完全勝利。そして男に生まれた悦びを心底堪能出来た征服。

 そんな輝かしい日々は、この時、一旦幕を閉じたのだった。

***********************

***つづく