令和元年9月27日・初版
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「よっしゃ〜、全機撃墜!」
理愛が出ていき、独りになった部屋だが、思わず風下はガッツポーズをとり、雄叫びをあげていた。
ゲームのイベントをクリアした際のいつもの儀式でもあるが、今回はリアル度が段違いに高い。
舵を切れば艦ごと動くし、ミサイルを打てば発射音が部屋まで響く。
気合も入ったし、自分でも集中し、上手くクリア出来たと思う。
ただ、レベルや難易度からすると、アベンジャー3機は中ボスクラス。
激闘しつつも、この後にラスボスと戦いが待ち受けていることは、十分予想されたし、覚悟もしていた。
ゲームとなると冷静沈着、おまけに慎重になる風下は、この時でもまだ余力を残していた。
もちろん余力といっても、防衛のための近接射程の機関砲と数発の対空ミサイルだけだが。
PCモニターには付近の海図が映し出されていた。
艦の進行方向から、攻撃機は来襲した。とすれば、敵の本拠はその先にある。
そして視線を移せば、見事なまでに妖し過ぎる島が存在しているのだ。
「ラスボス……いや、敵の本拠はこの島に違いないのに! ちきしょう〜! 対地ミサイルがあればなぁ〜!」
一応、専守防衛が建前の護衛艦なので、当初から攻撃兵器は搭載されていない。
従って、攻撃を受けない限り、手を出すことは出来ないのだ。
余してある対空ミサイルは、感熱方式のもの。
照準された空中付近の熱源を探知し、追尾・撃破する。
なので、島に熱源が無ければ命中することもないし、そもそも陸地である島を照準出来ない。
その時だった。
突如、PCからアラーム音が響き、モニター画面上、艦と島の丁度中間空域に光点が現れた。
航空機を示すマークとは明らかに違う。もっと質量の小さな……丁度、人間サイズのものだ。
また、アラーム音も、アラームらしくない……どことなく心が浮き立つような明るい調子だし、光点の点滅も妖しいものではなく、いうなれば味方の光。
風下は直感的に、この光点が邪悪な本拠攻撃の手引きとなるように感じた。
いや、何の根拠もないが、そう信じられたのだ。
迷うことなく風下は光点に照準し、残存のミサイルを全て発射した。
まるでミサイル発射を待っていたかのように、光点は島の方向へ移動を開始し始めた。
亜音速で追うミサイルに比べ、逃げる光点の速度は緩慢だが、先程の攻撃機とほぼ同等程度…時速にして300km程度は出ている。
この分でいけば、丁度、島の上空付近でミサイルが追いつく計算になる。
モニター画面でしか確認することが出来ないので、光点の正体は判らない。
速度からして、鳥などの生物ではあり得ない。
ただ、熱源探知のミサイルで照準出来るのだから、熱を発する固体か強いエネルギー体。
一定の温度を持ち、300km程度の速度で動く、不思議な人間サイズの雷雲…そんなところだろうか?
(もしかしてまだ見ぬティアラヒロインだったりして……まあ、そんなに都合よく、次から次に美人の天使が登場しないよな!?)
一瞬、風下の脳裏をそんな希望に等しい想いが過った。
そして何故か、秘書としてついて来た楠風理愛の面影も被るように過った。
スタイル抜群の美女。ティアラヒロインの特徴と偶々重なるからだろうか。
その時、モニターの緊張感が、デレッと緩みかけた風下の気を引き締めた。
ミサイルが光点に追いつこうとしている。そして、同時に島にも到達しようとしている。
光点が寸でのところでミサイルをやり過ごし、島に熱源があるならば……。
数発のミサイルの軌跡と光点はここで重なり消滅した。
島に命中し、爆発したのか?
爆発を示すエネルギー反応までは、このPCでは探知不能らしい。
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「あう〜あ! はうっ、はうう〜うっ、突き上げる! はあ、いやんっ、揉まれながらっ! 揉まれながら、ズンズン突き上げるっ!赤……赤鬼のご主人様のが、中でっ! ああっ、凄いっ、凄いいっ!」
砂浜に仰向けになり、両掌で腹の上に跨らせたラスキアの巨乳を揉みあげる。
乳首を指先で弄ったり、指又で挟んだりしながら、掌一杯でその重量感と柔らかさを楽しんでいく。
性奴隷として仕込まれた今でも、巨乳が最大の弱点であることに変わりはない。
破邪戦闘にはすっかり生かすことが出来なくなったエネルギーだが、その強壮効果は相変わらず。
巨乳を揉めば揉むだけ、体内に逆流し、性感を最大限にまで高めてしまう点がティアラヒロイン当時のままなのだ。
「いやっあん……逝くう〜! ああっ、あ〜、あ〜逝く〜う……逝く、逝く、逝く、逝くうう〜う!」
キュキューン!と奥から絞まり、ギュッ!ギュッ!と絞られるような感覚。
何度味わっても飽きることのない、ラスキアが絶頂に達した証しだ。
いつも同様、堪え切れずに赤鬼は股間の全てを解放した。
(ドピュ! ピュピュッ〜ッ!)
もちろん巨乳は鷲掴みのまま下から揉み上げながらだ。
掌から伝わる、柔らかながらしっかりした質感。
形容し難い心地良さも相まって、精子の放出に弾みがつく。
最早、一滴たりとも残り得ない勢いで、ラスキアの子宮にぶちまけていくのだ。
「はあはあ……こんなに……こんなに思い切り! はあはあ……いやん……はあはあ、逝っちゃう! はあはあ…あっ、熱いのが……いっ、いっぱい!」
絶頂直後のラスキアの荒い息遣いが響く。アイドル顔を紅く染め、汗だくで喘いでいるのだ。
とはいえ、すでに赤鬼は目を閉じ恍惚状態に入っていた。
全ての精子を吐き出し、そのままラスキアの中で萎えていく。
この一仕事を終えた達成感がまた堪らないのだ。
「はあはあ……ああんっ! こっ、今度は……青い御主人様のがっ! はあはあ……いやんっ、はふっ! むほおっ!」
萎えかけてはいるものの、未だ貫いたまま。
腹の上に乗っているラスキアの重量が、小さな悲鳴と共にグッと増した。
休憩を済ませた青鬼が、ラスキアに休む閑を与えず、咥えさせたのだ。
ご主人様が催したのであれば、性奴隷には昇天の余韻に浸ることさえ許されない。
「ふっふっふ、綺麗な月夜だ! こんな夜は波打ち際の散歩に連れて行ってやろう! そうだ、ラスキア……自分を支える肉棒をしっかり育てるのだぞ!」
「はんっ……んぐっ……んっはっ! ううっ……うぐっ、むぐう……はっふっ! やんっ……おっ、大きい…もう、口に入り切らないっ!」
どうやら青鬼がラスキアに仕掛けているようだが、それはそれで放って置いていい。
もう瞼を上げることすら面倒だ。
これまでの調教でラスキアの唇技は、最高域にまで達している。
全裸で犯され続けている、しどけない姿も伴い、咥えさせればすぐに成長し切ってしまうはずだ。
ふいに萎え切った肉棒がするりと抜けて、腹の上が軽くなる。
その拍子にラスキアの中で温められた液体が、ドロリと股間に零れ注いだ。
「ああんっ! 抱き上げられて……いっ、いやんっ! まっ、また、入れられちゃうの?! あっ、あふんっ! はいっ……入っちゃうっ!」
上方でラスキアと青鬼の気配が、より親密、より濃厚になっていく。
二人で一つになろうとしているのだ。
騎上位中出ししたばかりのラスキアを、その格好のまま抱え上げ、ローカル線の駅弁売りスタイルで犯す。
呑気だが容赦のない青鬼らしく、サンセットビーチを歩き回りながら、激しいピストンで責めたてていくのだ。
「んっ……あひっ(ズッ……ズブッ!)いあんっ……ああ〜あっ! はっ、入ったあ〜あっ!」
ラスキアの魔女のような絶叫で、思わず瞼を上げた赤鬼だったが、その声とは正反対の幻想さに見入ってしまった。
幾分赤みを帯びた丸い月を背景に、青鬼は影のように砂浜を歩んでいく。
対して、月光に照らされ、浮かび上がりながら、犯されていくラスキアの白い肌。
月明かりの砂浜に、静かに打ち寄せる波。詩情的なのに、とてつもなく淫靡な情景の出来上がりだ。
「はうっ、あうう〜ん! はううっ、あう〜あ! 凄いっ、青い御主人様、凄過ぎちゃうっ! あっはっ、いっ、いっやあ〜ん! だっ、駄目えっ! あっくう……つっ、突く! ズンズン突き上げるっ!」
両手で作った輪を首に掛け、太ももで銅をしっかり絞め、激しく子宮を突き上げられていく。
肉と肉の打ち合う音と、ラスキアの激しく悶える声が、波の音の合間に艶めかしく響く。
赤鬼による中出しのダメージを引きずったままのラスキアだが、もう、そんなことすら忘却の彼方かも知れない。
それほどになるまで、青鬼の気合十分の突き上げに追い込まれ、タジタジになっている。
巨乳の谷間に顔を差し入れられたり、ディープなキスをさせられたり、掌で支えられているヒップに至っては弄られ放題。
感極まったのか、ラスキアは首を大きく反らし、白目を剥いて絶叫する。
無様に開く唇からは、涎が幾筋も流れ落ちていく。
寝そべりながら見上げる赤鬼からは、そんな交合の向こうに丸く大きな月が見える。まさに淫らな影絵だ。
「あんっ……ああっ、ああっ〜! 逝く、すぐ逝く……うっく〜う、逝っちゃう! いやん! いやあ〜ん! 青っ、青い御主人様が激し過ぎるっ! ああっ〜、ああっ〜あ、ああ〜、逝く、逝く、逝く、逝くう、逝っくう〜う! あう〜あっ、くう〜うっ!」
背筋や足首、回した腕。ラスキア自身で自由になる部分だけが、ピーンと伸び、細かく震える。
青鬼の腕の中で、折り曲げられていても、また、どれほど厳しい調教を受けようとも、全く変わることのないラスキアの特徴。
ついに絶頂昇天に達したのだ。
当然、青鬼には強烈な絞めがもたらされ、精子を残らず絞り取られるはずだ。
ちょうどその時だった。
ラスキアが咆哮するその背後の月に、芥子粒のような小さな幾つかの点が浮かび上がった。
青鬼が唸りながら精液を注ぎ込む間に、芥子粒ははっきりした黒点になり、見る見る大きくなっていく。
形は円形。因みに、いつまでも丸く小さく見えるのは、真っ直ぐこちらに向かっているからだと気付いたのは、後のことだ。
静かだった波打ち際に、突如、一陣の突風が吹いた。
何故か、赤いマントとブルーのミニスカがひらめいたような気がした。
そしてほぼ同時に、見入っていた円形の黒点の正体が判った。
なんと……ミサイルの弾頭だ。
(ヒュ〜、ドッカーン!)
瞬間、雷が落ちたような閃光が青鬼を包んだように見えた。
赤鬼はその体ごと、大きく吹き飛ばされた。
飛ばされながらも、別のミサイルが飛んできているのが目に入った。
管理センターを主とする鬼ヶ島の施設が、標的になっているのは間違いない。
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“総員に次ぐ…第一種警戒態勢解除! 繰り返す、ただいま第一種警戒態勢を解除する! これより本艦は……”
艦内放送と同時に、非常灯から切り替わり、室内の明るさを増した。
護衛艦のコントロールが完全復旧したのだ。
ミサイルや光点が消滅した後しばらくして、レーダーから目標だった島そのものが姿を消した。
理愛の推測通り、電磁波の呪縛だったとすれば、発信源の消失はその解除に繋がる。
“ツゥー、ツゥー、ツゥー”
傍らの艦内電話がランプとともに着信を示した。
受話器に手をやった風下だったが、取る前に一度大きな深呼吸をした。
リアルな危機をゲームのように易々クリア……と言いたいところだが、それなりに緊張したのだろう。
未だ興奮冷めやらないのだ。
「こちらCICです。風下先生宛で東京の萩原内閣参与からお電話が入っています。繋ぎますので、お話し下さい!」
ずいぶん前に思えるが、時間にすれば、つい先程。
艦に乗り込んだとき、案内を申し出てくれた船務長の声だ。
警戒態勢が解除されたからか、声が若干弾んでいる。
風下が応えるよりも早く、受話器の向こうの相手が切り替わった。
「もしもし、こちら聖望女子大の萩原です。まずはお詫びさせてください。様々なことをお願いすることになってしまって……、また、結局、危険な目に合わせることになってしまい、本当に申し訳ありませんでした。楠風から報告がありました。所長さんのお蔭で皆、無事で済んだと……」
上品で落ち着いた口調。
そして聞き手の気持ちを一言で引き付ける話法。
さすがは一流の文化人だ。
風下の興奮は途端に吹き飛び、自分のペースを取り戻すことが出来た。
「あ〜いや、とんでもない! 結構、楽しませて……いや……変わらず元気で任務遂行中ですから、全然問題ありません! たっ、ただ……そうですね、若干…本の若干なのですけど、オプション作業が発生しましたので、手数料の方を少しだけお考え頂ければ……」
ドモったり、噛んだりはいつものことで、風下のペースではある。
ただ、戦闘の興奮の消えても、萩原教授というビッグネーム相手の電話と言うのが、新たな緊張を呼ぶのかも知れない。
一般客には廉価だが、資金力のある顧客には強気の商売が風下探偵事務所のモットー。
つまり、いつもはもっとずうずうしいのだが、どうにも下手になってしまう。
「もちろんです! 幾らでもご請求頂いて結構ですわ! 何しろ、最新鋭の護衛艦を一隻分……金額にして数千億円分救って頂いたのですから……その上、依頼は全て完全解決して頂けましたし……!」
落ち着いた口調ではあるが、萩原の声が一気に明るさを増した。
元々の依頼は、行方不明の聖美、流奈、紅子が向かったと思われる島の実地調査。
そしてコールガールのマインドコントロールからの解放とその手助けだ。
護衛艦での戦闘はオプションだ。
オプションの戦闘はとにかく、その全ての依頼が完全決着というのはどういうことなのだろう?
「えっ、完全解決!? すると……」
「ええっ! お蔭で例の女性の洗脳を解くことが出来ました。同時に、行方不明の紅子や二人の女探偵さんの所在と無事も確認出来ました!」
コールガールの解放については、萩原教授に託せば、大丈夫だと信じていた。
やはり心配なのは、聖美と流奈、そして紅子の失踪の方だ。
まあ、結局は心配するには及ばなかったのだが……とはいえ、この報告は心底、風下を安心させるものだった。
「ええっ、そうか…それは…本当に…本当に良かった!」
「鈴谷さんは少しお疲れの様でしたわ。お二人とも今日はこのまま帰宅し、明日から出所されるそうです!」
受話器を持ちながら、今すぐ踊り出したい気分だ。
萩原教授が会えたということなら、東京近郊で調査中だったということだ。
失踪や行方不明ではなく、単に報告が無かっただけ。
とにかく二人に対する心配は、単なる胸騒ぎに過ぎなかったわけだ。
「本当に良かった! それで、結局、姪の紅子さんのお出掛けと……そういえば先程、消えてしまったのですが……例の島は関係していたのですか?」
「それはまだなんとも……紅子は沖縄に居るようなので……戻り次第、確認したいと思っています。ただ、あの島を善からぬ組織が支配し、善からぬ企てを立てていたことだけは間違いありません!それも人類の脅威ともなり得るレベルの企みのようですよ!」
沖縄やら、良からぬ企てやら、謎は更に深まり、距離感やスケールまでも拡大して、ちょっとついていけない感じがする。
先程の戦闘からして、風下探偵事務所のような民間レベルが絡める話ではないのだ。
それはとにかく、風下には一つの懸念があった。
自衛隊の装備は恐ろしく高額なことだけは間違いない。
「なるほど、確かに島から軍事攻撃されたのですから、そうした規模の組織の関与は間違いないか……。あっ、それで勝手に反撃しちゃったのですが、正当防衛になりますよね? それからミサイル……全部使っちゃったのですが、あれかなり高いですよね?」
ここで、少しの間が生じた。
ただ、萩原教授の答えは、風下の心配を逆に裏切るものだった。
「何をおっしゃられているのです! 総理から感謝状を出さなければならないほどのご活躍ですよ! 後日、官邸から連絡させるようにします!」
一難去ってまた一難。
風下にとって最も苦手なことが、堅苦しい式典の参加だ。
ましてや感謝状とか表彰状の授与となれば、主役なのだから堪らない。
そもそも、いい歳をして礼服すら満足に持ってはいないのである。
「いっ、いや……そっ、そういうのは苦手! それはご遠慮させて頂いて……正当防衛とミサイル代だけ、目をつぶって頂ければ……」
「そうですか……ならば、代わりに報酬の方で……まあ、この件については、後日、御目にかかった上で改めて相談させて頂きましょう!」
必死の拒絶が伝わったのか、強くは勧められずに済んだ。
萩原教授のことだから、風下の気持ちを瞬時に酌んでくれたのだろう。
「そのようなわけで、調査する必要も、島そのものも無くなりました。何よりお疲れでしょう? すぐにヘリを手配しますので、東京にお戻りください!」
やはり知らずの内に疲れていたのか……本当に嬉しく、期待していた提案だった。
そしてふと、ここまでサポートしてくれた理愛が戻らぬことに気付いた。
結局、風下は、ホテルで美女の誘惑をかわし、ヘリに乗り護衛艦の乗艦体験をして、ゲームに興じただけに過ぎない。
その段取りを組み、素晴らしい結果に導いたのは全て、理愛の活躍なのだ。
「ご配慮ありがとうございます。それと楠風さんには、とても素晴らしいサポートをして頂きました。そういえば、まだ艦橋から戻ってこないな!」
「失礼ながら、楠風には別の任務を与えてしまって……もう、その艦には居ないはずです。後日、改めて今回のお礼とご挨拶に伺う際に同行させましょう!その時はよろしくお願い致します!」
美人でスタイル抜群で、その上優秀。聖美や流奈と話も合いそうだ。
そういえばどことなく同じ雰囲気を感じるのは自分だけだろうか?
理愛に、聖美や流奈を引き合わせる。
そんな小さな楽しみを胸に秘め、風下は心地良く了解した。
「気をつけて帰京されてください。本当に今回はありがとうございました! では、電話を戻しますね!」
電話が外から内に切り替わった。
今度は、例のクールな艦長だ。
「萩原参与より帰京の旨、伺いました。これより3分後にヘリを発艦させますので、甲板に出てお待ちください。こんなこともあろうかと、暖機を命じておきました。それから風下先生、今回の御乗艦、本当にありがとうございました。特別大臣表彰があるかと思います。後日、防衛省から連絡……」
「あっ、いっ、いや……そう言ったお話はお断りさせて頂くことにしておりまして……。あっ、はい、甲板ですね! それでは今回はお世話になりました!」
「あっ……もしもし…もしも〜し!」
すでに甲板にはヘリが準備し、扉を開けて待機していた。
潮の香りをたっぷり含んだ夜風がとても心地良い。
月明りが明るい夜。穏やかな波の音。なんだか、夢のような冒険だった。
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一方、ミサイルの爆心地では……
「……む〜ん」
意識を失ってからどれくらい経ったのだろう?
軽く数十メートルは吹き飛ばされたようだ。
ひどく頭痛がするので、頭に手をやると、やはり角が折れている。
とてつもない喪失感とパワーダウンを感じながら、周りを見渡してみると、状況が一変していた。
管理センターは無残に破壊され、黒煙を出しながら炎上中だ。
設備や備品はティアラヒロイン調教の為、凝りに凝って近代化したものの、外装や構造は70年前の建物のままだから、攻撃にはもろい。
また、その設備も軍事基地というより、ラブホテル同様のものだから、可燃物がふんだんに使われている。
何発かのミサイルを受ければ、簡単に引火し、大炎上してしまうのだ。
傍らには下半身を剥き出しにしたまま青鬼が伸びていた。
すっかり萎えた青い肉棒の先端は、乾き始めようとしている白濁液で濡れている。
まさにラスキアに中出ししているその瞬間に、ここまで同じ様に吹き飛ばされて来たのだ。
至福の時の失神だけに、ある意味、青鬼にとっては幸せではあるが、状況はあまり良くはない。
炎や有毒ガスへの耐性は、人間より勝っている鬼族ではあるが、さすがにその中では生きてはいけない。
しかも、ここまで激しく燃え上がってしまうと、消火活動は追いつかないし、例え消しても、設備の修復は難しい。
結局、センターの放棄ということになってしまうのだが、より深刻な問題なのは、ある装置の毀損度合いだ。
鬼ヶ島の特徴は(鬼族達が時空バリアと呼んでいる)時空の歪みを利用して、その島影を自由に現したり消したりすることにある。
これは第二次世界大戦時に、旧日本軍が開発した時空歪曲制御装置による効果なのだが、それには少し経緯の説明が必要になる。
当初、技術者達は対レーダー対策として、島のステレス化だけを考えていた。
ところが磁場を利用し実験していく内に、ひょんなことから不可視化までも成功してしまった。
更に、今度は元に戻すことが出来なくなった。つまり、島そのものが完全に消えてしまったのだ。
今となっては調べようもないが、実験によって何らかの時空を歪める要素が生まれてしまったのだろう。
その事態を受け、当時の技術陣は必死で改善策に取り組んだ。
そして時空を歪める磁場を抑え込んだ時だけ、島影が戻る…可視化することが出来るということを突き止めた。
そこで完成させたのが、時空歪曲制御装置だ。
要は、何もしなければ時空バリアが自然に発生し、島を時空の狭間に隠してしまう。
装置が稼働したときは、磁場を抑え込み、島は可視化し、現実のものとなる。
秘密基地としては、目視はもちろんレーダーからも島を不可視化出来るのだから、バリアの発生は都合良いのだが、デメリットもある。
ラスキア青姦の件でもあったように、バリアからは強力な電磁波が生じ、鬼族といえども生身では影響を受けてしまうのだ。
より問題なのは、装置の稼働が無い限り、バリアを抑えられず、時空の狭間から戻れなくなるということだ。
三人娘が揃って手元にあるならまだしも、着の身着のままで時空を彷徨うなど、悪夢というより死に等しい。
それは、絶対に避けなければならないことなのだ。
そういえば、覚醒して以来、肌を突き刺す電磁波が徐々に強くなって来ているようにも感じられる。
どの道、時空制御装置は炎上している管理センターに設置されているから、動作停止は時間の問題だ。
逃げ出す決心を固めた赤鬼は、瀕死の青鬼を抱えると、UFO駐機場へ走り始めた。
直前まで青鬼と交わっていたはずのラスキアは、どこへ吹き飛ばされたのだろう。
折角、絶品の性奴隷に仕立て上げたものを、時空の狭間に残していくことになるのは忍びないが、今は探している余裕もない。
思えば、これだけ犯して来ても、ラスキアには思い残すことが沢山ある。
なにしろ、その肉体の可能性や成長曲線たるや、言葉では言い表せないほど素晴らしい。
昨日より今日の性交は格段に心地好くなっているし、きっと明日のSEXはより期待出来るだろう。
溺れることは簡単でも、飽きる日が来ることは永遠に有り得ない。
それがラスキアの肉体の真骨頂なのだ。
この場は、今すぐには無理でも、後になれば、ましてや鬼族の科学力を以ってすれば、鬼ヶ島の復活など可能だろう。
そうなればラスキアを取り戻し、また好きなだけ犯すことが出来る。
レンタル明けに戻って来るミレイヤを思う存分弄び、心ゆくまでフォルティアに子種を浴びせる。
そんな宴の再興を期し、赤鬼は最後の力を振り絞り、猛然とダッシュした。
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夢のような1日が夢と共に明けた。
記憶の全てが幻のように現実的ではなかったが、頭脳と身体、特に指先には心地よい疲労が残っている。
誰にも気付かれないかも知れないけれど、邪悪な陰謀を挫き、人類の危機を防いだのは自分なのだ。
今朝は雲ひとつ無い日本晴れ。
風下の冒険と活躍を賞賛するかのように、朝陽がさんさんと降り注ぐ。
いつもより早い時間に目が覚めた風下は、いつもより早い時間に事務所へ着いた。
そしていつもより早いはずなのに、そこにはいつもと同じ光景があった。
入口の扉は開かれ、事務所はすでに活動を開始していたのだ。
「あっ、所長! おはようございます」
「おはようございます、風下所長!」
昨日までの失踪が夢だったかのように、そこには聖美と流奈の姿があった。
「昨日まで、調査で事務所を空けてしまい申し訳ありませんでした。心配をかけてしまって……以後は勝手な行動は慎みます!」
聖美の謝罪は誠心誠意で誠実だ。とても哀らしくて、思わずフォローを入れたくなってしまう。
「急を要することだったので、相談もせずに……でも、途中報告無しは駄目ですよね。反省しています……ごめんなさい!」
流奈がペコリと頭を下げる。こちらは愛らしくて、思わず水に流したくなってしまう。
心配したのは事実だし、無断行動は良くないことではあるものの……。
二人のことは信頼しているし、事務所の繁盛もこれまでの二人の無断行動のお陰とも言えなくない。
その上でこのように神妙な態度を取られると、風下自身、叱るわけにも行かず、どうすればよいのか判らなくなる。
いつも一緒に居るから慣れてはいるが、なにしろ、二人とも絶世の美女なのだ。
「それから、所長、ありがとうございました!(チュッ!)」
「本当に、所長のお陰です。カッコよかったですよ!(チュッ!)」
いきなり聖美と流奈から両方の頬にキスのプレゼントが贈られた。
(ごく最近、どこかで同じ香りがしたような……)
一瞬、頭を過ぎった疑問だったが、その場所や時間を詳細に思い出す余裕は風下には皆無だった。
それどころか、キスの真意を考える余裕すら一切無かったのだ。
風下がそれほどまでに面食らっていたのは言うまでもない。
なにしろ二人とも絶世の美女だからなのだ。
「それで、もう一つお願いがあるのですが……」
聖美が一枚の紙を取り出した。
「えっ……取材旅行の出張届!? 一週間?」
少し前に聖美がゲットしてきた沖縄のフリーペーパー企画だ。
現地を見ながら、色々、クライアントと打合せする計画になっている。
「今回の調査は週末返上でしたから、その代休も兼ねてお願いします。女の子向けのフリペなので、是非、流奈さんにも同行してもらいたいと思っているのですが……」
「今度は報告を絶やさないので、是非是非、許可をお願いしま〜す。ほら、用意ももうして来ているのです。もうすぐ空港へ向かわないと飛行機に間に合わないし……」
定員は2名だから、この場合、風下は同行出来ない。
また、これから用意を始めることを考えたら飛行機の時間に間に合わないし、これまでの働きを考えれば、許可しないわけにも行かない。
(なるほど、さっきのキスの真意はここにあったのか……)
「わっ、わかったよ! 二人で行って来なさい。良い紙面を企画して来てね」
「はい、任せて下さい。この仕事、全力で達成します!」
聖美の力強い言葉に流奈が頷いた。
風下には、なぜかそのとき二人がとても頼もしい女勇者に見えた。
東京で失われた大切なものを、沖縄の地へ取り返しに向かうような気がしたのだ。
「いってきま〜す! あっ、今度は経過報告、忘れないようにしま〜す!」
流奈がいち早く事務所を飛び出していく。
「あっ、待って、流奈さん! それでは所長、行ってきます! 留守をよろしく〜!」
聖美が身を翻し、流奈を追って出ていった。
いつもながら、勝手で慌しいのだが、なぜか許せてしまう。
それもこれも仕方が無いことなのかも知れない。
いつも一緒に居るから慣れてはいるが……。なにしろ、二人とも絶世の美女なのだ。
***完